古いパラダイムで書かれた本をがんばって読んでも費用対効果に見合わないのだ。そして最新の「知の見取図」を手に入れたら、古典も含め、自分の興味のある分野を読み進めていけばいい。ーはじめにー『「読まなくてもいい本」の読書案内 ――知の最前線を5日間で探検する』
作家 橘玲さんの著書『「読まなくてもいい本」の読書案内』より、本の選び方に関するひとこと。
毎年、大量の本が出版されている中、どの本を読めばよいのかというのは、いつの世も変わらぬ、悩みのタネである。
本書では、そんなときのひとつの解決策として、「古いパラダイム(古いものの見方)をしている本を読むのをやめてしまってはどうか」と、提案している。
かつて、地球は平らだと思われていたように、ある時期をさかいにして、考え方が根本から変わってしまうことがある。本に関しても同様で、脳科学やゲーム理論、進化論など、とくに学問分野に関しては、前提条件をくつがえすような変化が起こっているのだという。俗に言う、「難しくて分厚い古典」というものがあるが、はたしてその内容は、現代の最新の状況にどれほど当てはまるのだろうか。他の有益な本と出会う機会を失ってまで、最初に読むべき1冊なのかどうか、疑ってみるべきなのであろう。
あれもこれも読まなくてはいけないと、数百冊もの未読リストをため込んでいる人もいるかもしれない。しかし、そんな膨大な量に躊躇して、けっきょくどれにも手をつけられずにいるようなことがあれば、著者のいうところの「古いパラダイムの本」はとりあえずは除外し、「新しいパラダイム」で書かれた1冊をまずは読み始めるというのは、とても合理的な考え方である。
この本の選び方を聞いて、「古典や古い名著こそ学ぶべきものがある」という批判をすることは可能であるが、これは、優先順位の話だと考えた方がいい。無限の時間があれば、古いものから順番に読んでいくという方法もアリかもしれないが、人の時間は限られていて、「読書」にかける時間はさらに少ない。
「リスク」という観点から考えても、知識が少ない段階では、「新しいパラダイム」の本から読んでいくことが、とくに有効かと思われる。自分にはその分野が合わず、途中で読むのをやめてしまった場合、「古いパラダイムの本」だと、勘違いをそのまま知識としてたくわえ、「あの名著に書かれていたから真実に違いない」と、うそぶくことになりかねない。
最初の1冊を読む中で、もしその分野に興味を持てば、いかにして過去の偉人たちは「新しいパラダイム」に至ったのかと、歴史をさかのぼっていけばよいのである。
本書ではこの後、「では、新しいパラダイムとは具体的にどういったものなのか」と続くことになり、ひとつひとつの分野を取り上げて解説している。具体的な内容が知りたい場合は、本書で確認してほしい。
個人的には、どの本を読もうかと迷うときこそ楽しかったりもするが、「手がかり」がなければただの迷子である。新たな分野を読みはじめる際には、この視点を手がかりにしてみたいと思う。
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