進路や将来に悩んだとき、あなたはどうしていますか?どうしていましたか?
ひとつの手として、「人に相談する」という方法がありますが、まだばくぜんと考えている段階では、言いたくなかったり、言葉にできなかったりもしますよね。
「笑われてしまう」のではないか、「否定されてしまう」のではないか、と、「人に知られる怖さ」を感じている方もいらっしゃることでしょう。
しかし、ひとりでただただ悩み続けていると、思考の迷路に迷い込んで、ぐるぐると同じところをさまよい、「心だけがすり減ってしまう」なんてことにもなりかねません…
ではどうするか。
そんなときに、自分のペースで一緒になって考えていける存在、それが「本」なのではないかなと思うんです。
そこで今回は、「進路に悩む高校3年生に読んでほしい!おすすめの本」と題して、読書が大好きだという、読書家10人の方に、お話をうかがってみました。
本のタイトルだけでなく、「その本のどんなところが高校生という時期に読むのにおすすめなのか」「自分自身はどんな風にその本を読んだのか」など、体験談もまじえていろいろと教えていただきました。
しかし、おすすめいただいた本はそれぞれ、特色のあるものばかり。本の中には「エネルギーが強すぎるもの」もありますので、ご注意ください。
進路や将来という大きな選択だからこそ、しっかりとご自身の意見を持った上で、さまざまな意見と比べていきながら、考えていただければと思います。
進路に悩む高校生に読んで欲しいおすすめの本9冊
「手紙屋」蛍雪篇 〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜(著:喜多川 泰)
推薦人:前畑ヒカル
主人公は、進路に悩む高校二年生の女の子です。
その女子高生が、「手紙屋」との手紙のやりとりの中で、「何のために勉強するか?」「何のために大学に行くか?」を見つけ、勉強の本当の意味とその面白さを学んでいきます。
女子高生が、手紙を通じて、「手紙屋」からの質問や問いかけに答える場面がいくつもあります。
高校三年生の読者なら、主人公と自分を置き変えて、質問の答えを考えてみたり、実際に紙に答えや自分の考えを書いてみたりしながら、この本を読んだら、進路が見えてくるのではないかと思います。
本の一部には、きれいなカラー写真と共に、短い言葉で、勉強や人生のエッセンスが記されていて、そのページも魅力的です。
私自身は、読み終わった時に、夢や希望を持っていいんだ、そして、自分もその夢や希望を実現していいんだと未来が明るくなったように感じました。
私にとっては、読んだ後に爽快感があるので、今までに五回ぐらい読み返しています。
私が大人になってから読んだ本ですが、自分が高校生の時に読みたかったと思った本であり、現在小学生の息子が高校生になったら、ぜひ読んで欲しい一冊です。
「プロフェッショナル仕事の流儀」シリーズ(編集:茂木 健一郎、NHK「プロフェッショナル」制作班)
※こちらの本はお二人の方に紹介していただきました。
推薦人:黒峯れい
こちらの本は、タイトル通り、テレビ番組の「プロフェッショナル 仕事の流儀」を書籍化したものです。
取り上げている職業は本当に様々ですが、私が興味を持った職業が載っていた巻を紹介します。その職業とは「海獣医師」です。※12巻掲載
今では全然違う仕事をしていますが、私の子どもの頃の夢は海洋生物学者でした。理系の才能が全くなかったので、諦めざるを得なかったものの、海の生き物は今でも大好きです。
海獣医師とは、水族館にいるアシカやセイウチ、シャチやイルカなど、海棲哺乳類を診る獣医のことです。
海獣医師のプロフェッショナルとして紹介されているのは、勝俣悦子さん。
勝俣さんが海獣医師を始めた頃、海獣に関する資料は国内にほとんど無く、毎日が手探りの戦いだったそうです。水族館にいるとはいえ、動物たちはもともと野生の生き物ですから、弱っていたり、怪我をしたりすると、隠そうとするものです。
獣医が気がついた時には手遅れ、ということになりかねません。それを防ぐためには、毎日の衛生管理と観察が非常に大切なのだと、勝俣さんは語っています。
その為に、餌入れの掃除も含めて細かい雑用まで何でもこなし、観察した様子を細かく記録しています。
動物たちに何かあったとき、勝俣さんは「明日まで様子を見よう」ということをしないそうです。何故かというと「明日まで様子を見よう」とは「明日生きていたら、何か手を打とう」という意味になるから。
死ぬのを待つくらいなら、何か一つでもできることをしなければならないと、固い決意を胸に、毎日動物たちに向き合っているのです。
その決意は、なにも最初から備わっていたものではありませんでした。もちろん毎日努力はしていましたが、ある出来事が勝俣さんの海獣医師としての在り方を決定づけます。その出来事とは?
それは、あなたがこの本を読んで確かめてみてください。
この12巻目には、海獣医師の他に「ユニセフ職員」「りんご農家」の方々が載っています。その他の巻に紹介されているプロフェッショナルも「小児心臓外科医」「弁護士」「高校教師」から「花火師」「樹木医」「テストドライバー」など、多岐にわたります。何か一つでも、あなたの琴線に触れる仕事があるのではないでしょうか。
進路とは、あなたの未来です。進路の先には就職があり、あなたも必ず何かしらの仕事をすることになります。「将来、こんな風に仕事してみたい」と思って、その為の進路を選ぶというのも一つの手です。プロフェッショナルたちの熱い思い、真剣な姿を垣間見ると「仕事」してみたくなりますよ。
推薦人:トリケラトプス
高校3年生ということで、就職、進学など進路は様々だと思います。ですが、どの進路をとるにしても共通でオススメしたいのがこの本です。
卒業後、どのように生きたいのか、どんな大人になりたいのか、ひとつの指標になるのではないかと思います。
なりたい職業などが決まっていればその職種のプロフェッショナルのエピソードを読めばいいですし、決まっていなければ1巻から読み進めていくと良いと思います。
ひとつの巻に3人分のプロフェッショナルのエピソードが入っているので、いろいろな流儀を知られてお得です。
本なので、勉強の合間にパラパラ見ても良いですし、プロフェッショナルが大事にしていることは太字で書いてあるのでそれだけつまみ読みしても良いと思います。
テレビで見てしまうと1時間弱取られるので(3人分だと3時間!)特に受験生には本がオススメです。高校卒業後の進路をゴールにするのではなくて、その先を見るのにうってつけだと思います。
悩みどころと逃げどころ(著:森絵都)
推薦人:はじめまして。カズです。
私もこの本を買ったきっかけは進路に悩んでいた時でした。
この本で役に立った考え方は、「他人と同じ職業や生き方をしなくていい」という考え方です。
私の場合は工業高校に行っていました。普通は、卒業後は学校が推薦してくれる職場に就職するのですが、僕は何にも考えず当たり前に就職するのが嫌だったので、就職せずに消防士になるために試験を受けました。
残念ながら受からなかったので、専門学校に行きましたが、このときの選択を後悔はしていません。
私が伝えたい事は、「人と比べずに自分の人生を歩んで欲しい」という事です。
いま進路に悩んでいて、これといってやりたい事がないという人も、探し続けていれば見つかると思います。探すことをあきらめず、見つけることができれば、きっと楽しい人生が待っています。
自分の進みたい道を見つけたときには、家族や友達や先生などに、反対されたとしても、その道を進んでください。
進路は自分自身で決めた方が良いです。それはなにより、自分で決めた方が「やり続けられる」からです。最初に、やり続ける期間を決めてみてください。そして、一度、期間を決めたら、その期間はやり続けてください。
向いてるとか、向いてないとかは、やり続けないと分からないのでやり通してください。
天才じゃない限り、初めからできる人なんかいないと思います。くじけそうになる時があるかもしれませんがやり続けてください。
ひとそれぞれ自分のペースというものがあるかと思いますが、ゆっくりとでも「続ける」ことが大切です。頑張ってください。
大学の思い出は就活です(苦笑)-大学生活50のお約束(著:石渡 嶺司)
推薦人:あんたっち
書店にてこの本のタイトルを見ただけで、これから進路を考える高校3年生にお勧めしようと手に取る人は、かなりの眼力の持ち主でしょう。
大学受験の控えた高校3年生は、まだ合格すら勝ち得ていない不安な状態です。大学生活を語った本に手を伸ばす余裕などないかもしれません。
更に言えば、サークルやアルバイト、留学に恋愛など、大学生活を謳歌したくて辛い受験勉強に日々耐えているのに、大学生活の思い出が就活なんて謳っている本は魅力的ではないと感じることでしょう。
ただ少し考えてみてください。高校3年生の次は進学すれば大学生になるのです。
この本の第8章「こんな大学もう嫌だ!-再受験・中退・転部」、この章は入学した大学に不満を抱いた人がため息をつきながら読む、そんな内容です。
高校時代に大学選びを真剣にやった人でも、入学してから、今の大学は自分には合わないと感じ、「もう嫌だ、やめたい」などと言う人が少なくないのです。
そもそも、自分はこの道で生きていく、この学問で身を立てる、そんな強い意思のもとで大学を選択している人ばかりではありません。多くは、本人の得意な分野で選び、不得意な分野は受験に不利だから避けた、そんな感じだと思います。
そうして合格を勝ち取っていく、若しくはここしか入れる大学がなかったと入学していきます。なんとか入学しても、勉強内容や進路変更などの壁にぶち当たる学生がいるのです。
そんな時、変更できない学部で他の大学を再受験した場合や他学部や他大学への編入、追随する学費は親にとっても子供にとってもおおきな負担です。
もう一つ「こんな大学もう嫌だ!」とする理由は、就活が見え始めてきた時です。無理に再受験や他大学へ編入しても、就活が思い通りにいかないとこんな気持ちになるんだとわかります。
だからこそ、大学選びの前に、大学のもう一歩先を見据えた自分になれる本書を読んでおくべきです。
その他に大学生になろうとしている高校3年生の今、大学生はこんなことで右往左往する、気を付けるべき日常の大きな魔の手なども書かれています。
入学して浮かれ始めてからでは、頭に入らないかもしれません。
自分の中に毒をもて(著:岡本太郎)
推薦人:糊口
昭和シュールリアリズムの大家、岡本太郎が、死の3年まえに書き上げた本です。「芸術は爆発だ!」という名言と太陽の塔は、アイコンとして有名でアートに興味のない今の高校生もどこかで目にしたことがあるかもしれません。
「ゲージュツカ」が、突飛な事をいっているだけの本でしょう?と思われるかも知れません。
確かに、本書内の著者の言葉は強く、巨匠の言葉として強く、とりようによっては、若い世代に独り善がりと響くかも知れません。
私たちは小さな頃から、横へ倣え、はみ出す事はいけないこと、とだれに習うことなく、身に付けてきて、それは、時に自分の可能性を自分で小さくしていきがちです。
受験を前にして、自分はパティシエとして大成したいという夢があるのに、親や世間が許してくれない気がして、有名大学の偏差値ばかり気にしてしまうなど、、、才能が自分にはないのだと自分に言い聞かせて。
太郎は言います。
「才能がないというのは、ずるい言い訳だ。そう言って、自分がやらないことを正当化しているだけだろ?
才能のあるなしに関わらず、純粋に生きることが、人間の本当の生き方だ。瞬間瞬間の危険にかけるのが人生だ。
絶望と憤りの中に、強烈な人生が彩られる。あえて破れることを決意して、社会にぶつかってみろ」
私は二浪の末、美術大学に入りました。やりたいことを探して毎日模作して描きづつけた毎日は、私の宝物です。
けれど卒業後、自分の画力では食べていけないのでは?とアートとは関係のない職につきました。安定をもとめたはずの毎日には、常になにかが足りない気がして昔読んだ、この本を読み返しました。
すると、この言葉が目に飛び込んできました。
「成功しようとするから、逆にうまくいかない。人生うまくやろうなんて、だれでも考えることで、それは大変いやしい根性だな。うまくやろうとすると結局、社会のベルトコンベアーの上にうまく乗せられてしまう」
読み返してゾッとしました。戦わず、ベルトコンベアーにすら乗れずにいるアラフォーの私に、突きつけられたような言葉です。
今更ながら、もう一度自分の道を模作したく転職活動中です。年齢や経験、なかなか思うように行かないことばかりですが、諦めたくないその気持ちを押してくれる本です。
これから始めて社会に出ていく皆さんにもきっと力をくれる一冊になると思います。
さぶ(著:山本 周五郎)
推薦人:大澤
私が山本周五郎さんの『さぶ』に出会ったのは10代の頃でした。この作品に出会えたからこそ、今の私があると感じます。
この作品の大きなテーマは友情です。しかし、登場人物のさぶと栄二を取り巻く人間の温かみや社会の厳しさといった、人生の良い面も悪い面も描かれています。
私はこの作品に出会ってから、世界が違って見えました。世界がとても美しく感じたことを覚えています。人を信じることの難しさ、その反面、人を信じることの尊さもこの作品に教えてもらいました。
今は社会で働いていますが、他人と関わらずには、働くことも生きていくこともできません。自分と価値観の違う他人と関わり合うことはとても難しいことです。
しかし、だからこそ面白く、美しいと思うことがあります。10代でこの作品に出会えたからこそ、そう思えるのではないかと思っています。
高校3年生の今、この作品に出会って欲しいと強く願っています。高校3年生の皆さんはこの先、良いことにも悪いことにも、様々なことに直面すると思います。
そんなときに、ふとこの作品を思い出してもらえれば、より素敵な未来が開けるのではないかと思います。
13歳のハローワーク(著:村上龍)
推薦人:まめちゃん
13歳のハローワークは、色々な職業について書かれた本です。
小さい子にもイメージのできるような職業だけではなく、普段私たちが見ることや、関わることのない職業の説明も載せられています。
13歳と聞くと中学生なのですが、高校生でも同じく、どんな職業が世の中に存在しているかが学べる本だと思います。
なかなか、学校ではそういう授業がないですよね。自分自身が中学生や、高校生の頃は本当に一握りの職業しか知らなったんだと思い、その頃こんな本があればぜひ読みたかったです。
実際、私は、自分の知っている職業の中でしか仕事を選択できませんでした。職業について「知らなかったこと」に気づけたのは大人になってからです。
ですから、いま高校生の人には、ぜひこの本を読んでほしい。本当に多くの職業のイメージがつかめます。
自分にできそうな仕事や、やりがいのある仕事につくための進路が見えてくるかと思います。
たとえ、本を読んでまだ決められなくても、職業を「知っている」のと「知らないでいる」のとは、大きく世の中も違って見えるでしょう。
夢をかなえるゾウ(著:水野敬也)
推薦人:かなた
私がこの本をお勧めする理由は、実際に私が高校生の時に進路で悩んでいた時にこの本と出会い自分を変えることが出来たからです。
私は何をすることもできず、だらしない学生生活を送ってきて、進路ということに興味を持てずにいました。
そんな時に友人が貸してくれた1冊の本がこの「夢をかなえるゾウ」です。「この本を読んで見れば世界が変わる」と言われました。
この本を読んで興味深かったのは、「コンビニで募金をする」など普段いつでもできることからをやってみるというところです。
実際に「募金をしよう」と思っていてもしなかったり、当たり前のことをしなかったりというのが私のやる気を失わせていたようなのです。
私はこの本を読んでまず「当たり前のことをやる」、「なにげないことをやる」から初めてみました。
すると今まで全く興味がなかったものがなぜか好きになっていき、進路もその好きになったものへ進むことを決めることができました。
この本は、私の秘めた部分を引き出してくれました。ぜひ読んで欲しいと思います。
路傍の石(著:山本 有三)
推薦人:ねむ亭三
ちょうど進路のことを考えていた時期に読んでましたのが、この山本有三著『路傍の石』だったんですね。
どうして進路、と聞かれても、はっきりした理由はありませんが、やっぱりこれからどうしようか、っていう漠然とした不安に襲われていたときに読んだものですから、記憶に残ってるんでしょうね。
まあ、人生、大概は何かとうまくいかないようで、小説の主人公もいろいろと苦労する。その成長が描かれてるんですね、この小説は。
予期せぬ出来事、悲しいこと、そして念願の仕事に就いた喜びと希望など。まあ、それだけじゃないんですが、この長編小説にはまだまだ人生の一コマが描かれてる。
一般的に言えることですけれども、ご自分の進路ってものは、やっぱりご自分で決めなきゃいけない。人に言われるままに進むことはできない、それじゃ第一つまらないでしょう。
どうしてこの本がおすすめなのかと言いますと、主人公の吾一は、自分の気持ちを大切にして生きていく、その姿勢が痛いほど分かるからなんですね。
なんと言っても、これはいい。小説自体は未完で終わっておりますが、読んで価値ある小説だと言える。