高校1年生、そんな大人への1歩を踏み出そうとしている時期だからこそ、心に響く本があります。
人によっては大人になってから、「あ〜あのときに、この本を読めていれば、どんなによかったかと思うんです。」と、悔しく思ってしまうほどの本もあるようです。
それは、小説だけでなく、よりよく考えるための思考術の本であったり、将来を考えるための進路の本であったり、人それぞれ、読んでおきたかったと思う本は違っているようでした。
そこで今回は、「高校1年生になったら読みたい!おすすめの本」と題して、読書が大好きだという、読書家10人の方に、お話をうかがってみました。
本のタイトルだけでなく、「その本のどんなところが高校1年生という時期に読むのにおすすめなのか」「自分自身はどんな風にその本を読んだのか」など、体験談もまじえていろいろと教えていただきました。
ただし、万人におすすめできる本というものはありません。読み手の状況や心持ちにあわせて、本を選ぶ必要があります。
「あなたに合った1冊」と出会うためにも、紹介文を参考にしていただき、あなたの心になにかひっかかる1冊があれば、ぜひ手にとっていただければと思います。
高校1年生になったら読みたいおすすめ本10冊
カブキブ!(著:榎田ユウリ)
推薦人:aki
高校一年生の黒悟が、大好きな歌舞伎をやるための「歌舞伎部」を作るため奮闘するというストーリー。
この本で描かれているのは“「好き」を貫く”ということだ。
歌舞伎とは伝統芸能の世界。世襲制というのは、そういう形でなければ受け継いでいけない技術や思想があるから生まれたものである。
主人公クロは普通の高校生。でも歌舞伎に対する「好き」という感情は曲げられない。しかもそれは、ただ鑑賞するだけでは満足できないもの。
伝統の世界にただの高校生たちが挑んでいく。同じ舞台では絶対に勝てない。それでも、自分たちの舞台で自分たちの「歌舞伎」を作る。その過程に胸を打たれる。
クロの集める仲間が非常にユニーク粒ぞろいなのも作品の魅力の一つ。コスプレ衣装作りが得意なオタク、演劇部の王子、なぜか歌舞伎に詳しい不良、そして本当の歌舞伎界の御曹司-。
彼らがただのキャラクターで終わることなく、一人一人に綿密な物語が練られているところも読み所である。それぞれにそれぞれが葛藤を抱えていて、その「謎」がストーリー全体を盛り上げている。
特におすすめしたいのは、歌舞伎界のエリート「蛯原仁」のキャラクター。登場してから一貫して、主人公たちの「カブキブ」に対して否定的な見方をしている。
いわゆる嫌われ役だが、読み進めるにつれて彼の葛藤から目が離せなくなってしまった。実際、何か習い事をしていた人(それも結構厳しい)には、響くものがあるのではないだろうか。
昨今、「楽しんで」「下手でもいい」なんて言葉が横行している。それも正しいとは思うが、基礎練習を積み上げるからこそ応用的なものがこなせるようになる。
厳しさが生むアートがある。それを信じてきた人間にとってこれらの価値観は認めがたいことなのだ。
私事だが、この「仁」というキャラクターを通して前に書いたような痛々しい感情を味わった。認めたくない感情があるということに気が付いたのである。
仁は「持っている」が故に自由ではない。伝統の世界に生きることが生まれながら決まっている彼に、自由に楽しく歌舞伎を作ろうとするクロたちはどう映るだろうか。
自分の信じてきたものが全く通じない世界に出会うことがあったとき、人はどうするのだろうか。目的に向かって突き進むクロたちの勢いのある「熱さ」と反対に、彼のシーンでは「迷い」が多く見られる。この対立構造が見事である。
とは言っても、その葛藤すらエンターテイメントに仕上げてしまうのがこの作品の魅力でもある。大いに熱くなり、迷い、感情を傾けながら読むことをおすすめしたい。
それだけの深さのある物語であり、読み終わったあと、どんな感想を抱いたのか、そこにも目をむけてみると面白い発見があるかもしれない。
いくら誰かが否定しようと突き進むだけの熱量を「好き」は持っている。クロは単純にそれを教えてくれる。どんな壁があっても、どれだけ誰かに嫌われても、それを表現するときは最高に「楽しい」のだ。
カラフル(著:森絵都)
推薦人:りん
私がこの本を読んだきっかけは、『永遠の出口』という本を読んで、森絵都さんが書く他の作品を読んでみたいと思ったからでした。
この本を高校1年生におすすめする理由はいくつかあります。
一つ目は、文章が柔らかく読みやすいため、本を読むのが苦手、という人でもすらすら読めるからです。
かと言って、幼稚な内容というわけではなく、細かな人間関係や複雑な心情表現も多くあって、高校生が読んでも面白い作品です。物語の最後にはすっきりと謎が解け、読後感も爽やかです。
二つ目は、一歩大人へと近づく高校生だからこそ読んでほしいと思える内容だからです。
思春期になると、周りの目を気にし過ぎることで、自分のしたいことができなくなったり、自分で自分を縛ってしまう人も多いと思います。
私自身がそうでした。この本を読み終わると、もっとのびのびと振る舞えばいいのだ、という気持ちに自然となれます。
主人公の真は、家族や周りの人、何より自分自身に対して先入観を持っていますが、だんだんその先入観がなくなっていくところも見どころです。ぜひ自分自身と重ねて読んでもらいたいです。
この本を読み進めていく中で着目してほしいのは、タイトルでもある『カラフル』の意味です。
何が一体カラフルなのか。その意味がわかったとき、もっと周りの人を大切にしよう、いろんな角度から物事を見よう、と思えるはずです。
星の王子さま(著:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
推薦人:はるひ
オススメする本は星の王子さまです。一般的に童話と知られているので、幼い頃に一度読んだことがあるかもしれません。
もちろん、初めて読んでも、童話とは思えない読み応えのある深い本だとわたしは思います。可愛い挿絵が入っている所も魅力的です。
あらすじとしては、主人公である「星の王子」が7つの星を旅して、自身の大切な気持ちに気付いていく話です。
旅に出る前には分からなかった、そんな大切な気持ちが、旅を終える時にやっと分かってきます。それは7つの星をその順序通りに移動しなければ発見出来なかった気持ちなのです。
わたしは、同作を小学生の頃に初めて読みました。幼く、複雑な感情もまだないような年齢だったので、色々な星を旅できて知らなかった感情を得ていく主人公に憧れを抱いていました。
また、有名な言葉で、「大切なことは目に見えない」とありますが、当時はその意味が全然わかりませんでした。
大学在学時、再度読む機会があったのですが、こんなに切ない話だっただろうかという感想を持ちました。そして、年を重ね、先述した名言の意味がわかったように感じます。
言うまでもありませんが、人間は思っていることは口に出さないとわからないものです。
態度に出している気でいても、他人によって捉え方は異なるので、全然違うように見られてしまうことも多々あります。
これが、大切なものは目に見えない、ということです。
高校生で初めて読む方でも、より経験を積んだ大人になった頃にもう一度読んでみると、また違った捉え方になっているかもしれません。そんな面白さのある作品なのでオススメです。
頭がよくなる思考術(著:白取春彦)
推薦人:やるきねこ
今回紹介する『頭がよくなる思考術』とは、頭がよくなる勉強法ではありません。
悩める時、どう自分に問いかけ、どう自分と向き合い、他人や社会の声に惑わされる事なく時間を有効活用させるかが書かれています。
大人が読めば、当然の事じゃないかと思う人も居るでしょうし、確かにそうだなぁと深く頷く人も居るでしょう。
この本は、自己啓発本よりももっと軽い、思考方法の再確認のようなものです。
しかし、子供の不安定な心には、新しい考え方として受け取ってもらえるかもしれないと思い、おすすめとして選びました。
精神が弱っている時は、何をしても良い結果が得られなかったり、良い結果を得られているのにポジティブに受け取れない事があります。
そして、それらを励まそうとした時、いくら親が・先生が・大人が、自身の経験を語っても響かない時があります。
素直に受け取ってもらえない時があります。誰の声も聞かず、しかし何かに縋りたい、そんな時にそっとこの本を差し出してあげて欲しいのです。
そして、大人であっても一度この本を読んでみて欲しいのです。大人は子供や周りに対し、押し付けた考えや世間を意識した考えに縛られていないかを。
子供は自分に対し、同世代の友人や大人達の小さな世界に囚われていないかを考えるために活用して欲しいと思います。
自分の人生は誰の責任にもする事は出来ず、自身で背負っていくものである自覚を早い内から知る事で、自分のための勉学であり、学校生活であると思って貰いたいのです。
そして、将来への選択を考える事は、義務ではなく自由であると思って欲しいのです。
大人や周りに縛られず、自分らしく生きられる将来のために、その思考の広げ方をこの本で身につけてもらえれば、と思います。
シャーロックホームズシリーズ(著:アーサー ・コナン・ドイル)
推薦人:大島
私は、あらたに高校一年生となる人への本として、シャーロックホームズシリーズをお勧めします。
どうして推理小説?ミステリー小説?と疑問に思うかもしれません。
なぜこのシャーロックホームズがおすすめなのかというと、この本を読むことで視野を広げることができるからです。
考えて見てください。
あなた方は今までに勝手な自分の思い込みで、人や物事を決めつけてしまっていることはありませんでしたか?
それでは、本当に見たいものを見ることができないかもしれません。
この本を読むことで主人公であるシャーロックホームズの「人との向き合い方」や「事件を推理して行く上での視野の広さ」を通して、
「自分の思い込みで決めつけてしまうことがいかに愚かであるのか」といったことを推理を通してワクワクしながら理解してもらえると思います。
一つの視点だけでなく多方面からの視野を取り入れるようになってほしいです。それだけで今後の学校生活も楽しくなっていくのではないでしょうか。
龍馬伝(作:福田靖、ノベライズ:青木邦子)
推薦人:えちゅ
龍馬伝は、2010年、NHKの大河ドラマで放送されていた、同タイトル「龍馬伝」の小説版です。全4巻あります。
主人公はもちろん、誰もが知ってる坂本龍馬。
龍馬の幼少期の頃から暗殺されるまで、また、仲間が次々と時代の渦に
巻き込まれていく様、志半ばで仲間の命が散っていく様
もちろん、小説なのでフィクションあのですが、けっこう史実にもとづいて、えがかれていると思います。
土佐は、上士、下士の差別がひどいです。龍馬が、土佐勤王党の仲間と離れ、様々な人と出逢い、知識をつけ、一人、また一人と仲間を増やし、
あの時代には珍しい、だからこそ、うとまれたりもされたが、その、柔軟な発想力で、長州と薩摩を手を組ませたりなど、一、脱藩浪士が大仕事を成していく。
ついには、土佐の上士と手をくむまでになる様子には、鳥肌がたちます。
上士と下士が手を組むなど、考えられない、一生変わらない事だと思われてた事を龍馬は、やってのけた。
ついには、皆がよく知る、あの大政奉還までもを、為し遂げました。今の日本の原型は、龍馬が作ったといっても過言ではないと思います。
ただ、あの時代、龍馬の柔軟な発想、行動には、理解できるものはたぶん、仲間の海援隊だけだったのではなあかなぁ。
いきなり明日から新しい世の中の仕組みへと言われても役職を奪われた者たち、戦をしかけたかった者たちには龍馬が邪魔で仕方ない存在だったのだろう。
理解なんてできなかったのだろう。龍馬は、誕生日に暗殺されてしまいました。
龍馬伝は、本当に、オススメできる本です。読んで絶対損はないです。
地ブランド(著:博報堂地ブランドプロジェクト)
推薦人:よこやまさん
「地ブランド」をお勧めします。広告代理店の博報堂さんが中心となり作成した書籍です。
東日本大震災の後、地元に対する意識や地域活性化に対する考え方が大きく変化し、個々の幸せの尺度も大層変わったように思えます。この書籍は、震災前の平成18年に出版されています。
私が印象に残っているのは「ばか者、切れ者、よそ者がブランドをつくります。」というページです。
この話をすると、皆さん「切れ者」になりたがるので、なかなかブランド確立には、至りませんが、周囲を巻き込みリーダーシップを発揮する「ばか者」と外部からの視点で冷静かつ客観的な判断をする「よそ者」も欠かせません。
発信方法が多種多様にある現代社会では、情報の発信方法が、たくさんあるということは、情報の収集方法もたくさんあるのだということ。
その誰かが発信した情報を拾い上げる楽しみもあれば、これからつながるであろう誰かに、見つけてもらう工夫をすることも醍醐味です。
新刊ではありませんが、ぜひ、一度手にとっていただきたい。きっと、広告、経済、流通など視点が変わりはじめることと思います。
ライ麦畑でつかまえて(著:J.D.サリンジャー)
推薦人:文字ラ
原題は「The Cather in the Rye」というタイトルでアメリカ合衆国から世に出たサリンジャー氏の作品で、世界中で数多くの読者に読まれている有名な本です。
まだ読んだことがない学生でしたら読んでみるとちょっと色々な体験が出来ていいかと思います。
高校でうまくやっていくことができなくて学校をやめてしまう羽目になる17歳の男の子がいるんですが、その子の周辺の生活や人間関係などを描いた物語です。
少し反抗期などで悩みが多いと彼や彼の周囲の人間に共感が持てるかと思います。
基本的にどうやって人とうまくコミュニケーションを取って行くのか、そして人とうまくやっていきたいのに孤独に苛まれるなどの葛藤などが描かれていて、思春期の時期に読むと何らかの栄養になる部分もあるかと思われます。
この本は人気があって続編も作りたいという人がいたようですが、様々な著作権問題が生じて出版にはいたらなかったようです。読み終わった後、彼らの今後を自分の頭の中だけで創造してみるのもいいでしょう。
君たちはどう生きるか(著:吉野源三郎)
推薦人:ねむ亭三
ぜひとも考えて欲しいなと思うのは、ご自分の生き方、っていうものですね。
なにをいまさら言っているんだ、と思われるかもしれないけれど、これを考えるのは早ければ早いほどいいと思えるわけでして。
そりゃ、そういうものだろう、と、みんな思っています。ところが、これがなかなか思いもつかないものなんですね。
だって、今の若い子たちは、ご自分からそんなことを考えたりしない。せいぜい明日のこと、来週のこと、来月のことを考えることで精一杯なんじゃないでしょうか。生き方、っていうことになると、気が遠い。
それなら、いっそのこと、本で知識を得るという手段をとればいい。そう思うんですね。
たとえば、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』岩波文庫。この本のには、いろんな意見があるわけでして。
早くに父親を亡くした少年コペル君が、叔父さんと関わることで自分の生き方ってものを模索するお話。コペル君っていうのは、もちろんあだ名でございます。
この本が出版されたのは、もう、80年も前のことで、時代的にも今とはちょっとはちがうこともあるのだけれど、その内容は今も私たちの心を揺さぶるものがあるんですね。今はスマートフォンなんかで画像を追うのが主流なのかもしれないですが、活字も忘れて欲しくない。
偉そうなことは言えるはずもないけれど、これが私の本心なんです。
大学で何を学ぶか(著:浅羽通明)
推薦人:トリケラトプス
大学についての本はいろいろあるけれど、私が実際高校1年で読んだ浅羽通明氏氏の『大学で何を学ぶか』は衝撃でした。
進路ガイダンスなどを聞くと、大学受験については文理選択や受験科目について、学部学科選びでは自分が学びたいことについて…などの話があり、中学や高校の勉強の延長に大学があるのかなと考えていました。そしてそのつもりで大学へ入ろうと考えていました。
でも、この本を読んで、学歴フィルターのことやOBOGの大学出身者のコネのこと、ダブルスクールで資格を取得する人が増えていることなど現実的な話を知り目に鱗でした。
私は実際にこの本を参考にして大学選びをしました。学びたいことがあったので、学部はその勉強ができるところにしましたが、大学は、地元の伝統校でOBOGがたくさんいて、地元の就職に強いところにしました。
サークル活動は、遊んでいるだけのイメージがありましたが、本によるとサークル活動の経験の方が社会へ出てから役に立つとのことだったので、サークル活動もしました。
実際に社会へ出てから、確かに!と実感しました。もしこの本を読んでいなかったら、先の現実的な見通しを持たないまま、なんとなく大学進学していたかもしれませんし、なんとなく大学生活を送っていたかも知れません。
でも、この本を参考にして、現実的な視点から大学選びをしたり、大学生活でいろいろ体験しようとチャレンジしたりできて良かったと思っています。ぜひ親子で読んでほしい一冊です。
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