学び方

【読書術】BGMを聴き流しながら作業するように、本を読み流しながら思考する

音楽はカジュアルに楽しめるのに、どうして本を前にすると僕らは身がまえて、変に生真面目になってしまうんでしょうか?音楽を聴くときみたいに、もっと気軽に受け入れるわけにはいかないんでしょうか?「遅読家のための読書術」-第1章 なぜ読むのが遅いのか?-もう、ため込まない。フロー・リーディングとは?ー

「ライフハッカー」や「NewsWeek」などのウェブメディアで長年、ブックレビュー記事を書かれてきたライターの印南敦史さんの著書「遅読家のための読書術」より、音楽と読書を比較した指摘。

多くの読書本でも、「読書をもっと気軽に楽しんではどうか」といった趣旨の指摘はよく目にするものであるが、音楽と比較したこの指摘に面白さを感じた。

さらに本書では続けて「音楽を聴き流すように、本を読み流してはどうか」と主張している。今回はこの「本を読み流す」ことによる効果について、少し考えてみたい。

本を読み流して小さなかけらを集める

アップテンポの音楽を聴くことで作業のスピードが上がるように、軽快なジャズが流れたカフェで話をするとなんだか話がはずむことがあるように、音楽は「BGM」として、人の行動を後押ししてくれる。

一方、「読書」はというと、一般的にはその1冊だけに向き合って、もくもくと進める作業のように思われている。本を手に持つことで手元はふさがれ、文字を追うために目も覆われる、となると別の作業を入れ込むのはどうしても難しい。

しかし、「読書」をしながらでも「思考」はできる。

何かの「本」を読み流しているうちに、ぱっとアイデアが浮かんでくることがある。保留にしていた問題に、いきなり解決策が浮かんでくることがある。必ずしも「本」自体に具体的なアイデアが書かれているわけではないのだが、本の「文字」を自分の中に流しているうちに、どこかにカチッとハマったようにアイデアが浮き出てくるのだ。

このように「読書」からヒントを得ることを、本書の中では、「小さなかけらを集める」行為だと表現している。「レゴブロック」のように小さなひとつのパーツを「本」から拾うのである。

おそらく、そのレゴブロックのような「かけら」というのは自分の中にもすでに存在していて、「かけら」と「かけら」を繋ぎ合わせるための追加のパーツを、本を読み流すことで見つけることができるのかもしれない。

しかし、こうした新しい思考ができるようになる理由として、上記のような「組み合わせによって新たな思考が生まれる」という見方以外に、「自分自身の状態が変わることで新たな思考を思いつく」という、もうひとつ別の見方もある気がした。

こちらの見方は本書に書かれた内容からはズレるのだが、本書から拾った「かけら」がかみ合って浮かんできたアイデアとして、同様に考えてみたい。

本を読み流して違う自分を引き出す

作家の平野啓一郎さんの著書「私とは何か」に、「分人主義」という考え方が出てくる。「自分」という存在は、「相手によって引き出されて」存在しているという考え方だ。家族と接するときは家族との関係性の中に、仕事仲間と接するときは仕事仲間との関係性の中に、それぞれ「対象物に引き出された自分」が存在している。

唯一無二の本物の自分という存在が、周りへの行動をすべてコントロールしているわけではなく、対象との間に分かれてそれぞれの自分が存在しているのだ。

それはコンテンツに対しても同様で、アニメやゲーム、本に触れることによって「引き出された自分」がいる。「読書」をすることは、つまりは「引き出された自分」に出会う行為とも言えるのだ。

だと考えれば、新しい本を読んでいるときの自分は、いままでの自分ではなく、引き出された新しい自分である。

であるならば、新しい思考が浮かんでくるのも自然な流れなのかもしれない。もちろん、同じような本を読み流したところで、同じようなような自分しか引き出すことはできない。だからこそ、新たな分野や内容の本を読むことが必要になってくるのだろう。

自分を通した反応 

1つ目の「組み合わせによって新たな思考が生まれる」という見方と、2つ目の「自分自身の状態が変わることで新たな思考を思いつく」という見方、共通するところは、本だけで完結するものではなく、自分を通した反応が大切になってくるところであろうか。

本書を読むことで自分の場合は、そんなことを考えるに至ったが、「自分自身」を通すからこそ、この記事を読んでいる方含め、他の方が読めばまた別の思考が生まれてくるのだ。ちょっと他の方の書いた書評記事が気になってきたので、この後探してみたいと思う。

※コンテンツと「分人主義」の話は以前、コルクの佐渡島さんも「NewsPicks」でされていたので、興味がある方はこちらの記事も面白いかと。

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