学び方

なぜ「上手でかわいい」イラストを描いても売れないのか?

絵における「上手」と「可愛い」は、洋服にとって「破れていない」と「可愛い」です。「みんなのイラスト教室」中級2時間目 消費者の「心を掴む」には? よりー

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットや、 「謎解きはディナーのあとで」などの小説表紙を手がける、人気イラストレーター 中村佑介さんの著書「みんなのイラスト教室」より、なぜ絵の「うまさ」や「かわいさ」がイラストの人気を決めないのかを絶妙に言い表した例え。

本書は、教室の生徒から寄せられた質問に、中村さんが答えていく、Q&A方式の構成になっており、この「ひとこと」も、生徒から届いた「自分の絵を使ったオリジナルグッズやLINEスタンプがいまひとつ売れない」という相談へのアドバイスのひとつとして言われた言葉である。

どの洋服を買うかを決めるのは、「破れていない」「可愛い」といった、そんな当たり前の要素だけでなく、それにプラスして他と違う何かや、話題性があるか、自分に合っていて気に入るかなど、最低限の条件以外の部分が決断の決め手となる。

著者はそれは「絵」に関しても同じで、「上手」で「かわいい」は当たり前の要素だと指摘しているのだ。もちろん、ここでいう「かわいい」は、今回の生徒のイラストを題材にした特徴なので、「カッコいい」「面白い」といった別の言葉にも代えられるだろう。

「例外」として、上手じゃなくても、かわいくなくても、人気のある絵というものがあるが、これにも共通することが言えるかもしれない。絵における、アジのある下手かわいい画風と、洋服における、ダメージ加工の奇抜なファッションは、同じように、プラスαの部分を演出する要素だと考えられる。

勘違いしてほしくないのだが、この「ひとこと」だけを見ると、「うまくてかわいいのは当たり前!それじゃダメだ!」といった、強い否定の言葉のように感じてしまうかもしれないが、本書はここで終わらない。

では具体的にどういった工夫が必要なのか、他の人気クリエーターはどんな描き方をしているのか、知名度が関係しているのか、消費者の心を掴むにはどうするか、といったその先の話をひとつひとつ丁寧に解説している。

ここまでしっかりと明瞭に理論や経験もふまえて答えたイラスト講座もめずらしい。絵を描く人だけでなく、プロモーションを担当しているような人にも参考になるかと思われる。

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