「骨伝導イヤホンが気になってるんだけど、どれが良いか分からない」
「音質?デザイン?、何を気にして選べばいいの?」
「そもそも骨伝導イヤホンって、耳とか頭痛くなったりしない?」
骨伝導イヤホンを使ってきて、とくに聞かれることが多かった質問です。
著者は普段、音声業界のスタートアップで働いていて最近では、骨伝導イヤホンを持っている人も周りに増えてきました。しかし、業界を離れるとまだまだマイナーで、身につけていると目に止まって、「それなに?」って話になることもしばしば。
そんな骨伝導イヤホン 初心者の方に対してシンプルに説明すれば、
頭の骨を振動させて聴けるようにするイヤホンだよ
なんて回答になりますが、それだけ聞くと「なにそれ怖い…」って思いますよね。
骨伝導の仕組みはイヤホン業界の中でも新しいものなので、調べて出てくるメーカー名も聞いたことないとこばかりで。2021年8月時点の販売台数は、イヤホン・ヘッドホン全体のうちの1%程度なのだとか。※家電製品の実売データを扱う「BCNランキング」参照
いまの日本では、「ワイヤレスイヤホンの良さはわかるけれど、骨伝導イヤホンってどうなん?」っていう感想が、一番多いんじゃないかと思います。
そんな骨伝導イヤホンなんですが、個人的には激推ししてまして、このガジェットの購入を機に、「日常の音声体験がまったく変わった」と言っていいほどに、生活を変えてくれたイヤホンでした。
※ちなみに我が家では、家族みんなで骨伝導イヤホンばかり使っていて、骨伝導イヤホン置き場 兼 充電スペースが作られています。
この記事では、そんな骨伝導イヤホンの魅力を、まだ体験したことのない初心者の方に向けて、選び方から、購入前に見るべきポイント、逆に「骨伝導イヤホンをおすすめしないのはどんな人なのか?」という注意点まで、詳しくまとめていきます。
結論から言うと
「初心者向けの1台どれが良いかだけ教えてよ」ってせっかちな方のために、最初に結論から言っておくと、骨伝導イヤホンをまずは試してみたいということであれば、Shokzのエントリーモデル「オープンムーブ」がおすすめです。
骨伝導イヤホンといっても5000円〜3万円くらいまで価格の差がありますが、価格が高すぎるものを使っても、あくまでその差は85点と90点の差のような感じ。
なので、まず試してみたいということであれば、こちらで必要十分。逆にこれより値段下げたものを選ぶと、振動に違和感があったり、つけ心地が良くなかったり、「こんなんだったら、骨伝導イヤホン使えないわ」ってなってしまう可能性高いんですよね。
まず最初の1台として試したい、ということならこれを選んでおけば損はしないと思います。
骨伝導イヤホンはどんなものか
選び方を見ていくにあたって、前提知識だけここでさくっとおさらいしておきましょう。
「骨伝導イヤホンとはなんですか?」という問いにあらためて一言で答えるならば、
「耳の周りの骨を振動させることで、音を聞かせるイヤホン」
です。良い点と悪い点をまとめると
骨伝導イヤホンの良いところ
耳をおおってしまうヘッドホンや、耳の中に入れるカナル式のイヤホンと違って、耳を塞がず周囲の音も聞くことができるのが一番の強み。耳を塞がないからこそ、通常の会話もスムーズにできて、耳の中が痛くなってしまったり、ということもありません。
「生活しながら音声コンテンツを聴く、音楽を聴く」という新しい聴取体験をもたらしてくれます。今までカナル型のワイヤレスイヤホンを使っていた方は、骨伝導イヤホンを初めて使ったときには使い心地の違いに驚くと思います。
「骨伝導イヤホンと、カナル型イヤホンの王者 AirPodsPro」の体験を比較した記事も下記にまとめていますので、よかったらこちらも読んでみてください。
骨伝導イヤホンの悪いところ
外の音が聞こえてしまうことは一方でマイナスな点にもなっていて、周りがうるさいところでは聞きづらくなってしまったり。周りの音で聞こえづらいからと音を大きくしすぎると、音の出口をふさがずに骨を振動させているので、「音漏れ」が生じがちです。
また、骨の振動で聞こえる音は、どうしても音質が一定レベルを超えられないので、「映画」「音楽」などをベストな音と共に楽しみたいというときには、おすすめできません。
ただ、上記は利用シーンによって使い分ける必要がある点です。骨伝導イヤホンは新しいガジェットだからこそ、こういった使い方の部分でとまどうことがあるかもしれません。
下記の記事で、骨伝導イヤホンを3年以上使ってきた中で感じた「骨伝導イヤホンのデメリット」を20個以上あげて、それを踏まえてどのように活用しているかという回答をまとめていますので、こちらも参考にされてください。
骨伝導イヤホンが合う人・合わない人 一覧
ここまでにご紹介した「良い点」「悪い点」もふまえて、「骨伝導イヤホンはどんな人に合っていて、どんな人には合わないか」をまとめます。合わない場合には、別のイヤホンやヘッドホンを選んだ方がよかったりもするので、軽くチェックしてみてください。
骨伝導イヤホンが合う人
在宅ワークで家に人がいる方
耳をふさがないので、家族との会話を邪魔しない
育児中の方
子供の声にも気づける状態で音声が聴ける
歩きの通勤、ジョギングなどをする方
耳の中にイヤホンを入れないので、耳を痛めにくい
肌の弱い方
カナル式のように耳の形に合わなかったり、むれたりすることがない
骨伝導イヤホンが合わない人
映画や音楽を集中して楽しみたい方
ノイズキャンセリングは出来ず、音質もあまりよくない
電車通勤で使いたい方
周りの音がじゃまをして、聞こえづらい
目立つものを身につけたくない方
新しいガジェットなので良いも悪くも人の目にとまる
新しい体験に抵抗のある方
プレゼントの場合には、まだ骨伝導への抵抗がある人もいるので注意
購入時には何を比較して選べばいいか
ここからが本題。「しっかりと選んで買いたい」「何が違うのか理解して買いたい」という方は、骨伝導イヤホンを購入する際に何を気にすべきか。その「選ぶ基準」は以下の5つです。
1.メーカーの信頼性
2.予算
3.デザインの好み
4.つけ心地(振動の強さ、重さ)
5.生活シーンへのフィット(防水、通話機能)
この他にも細かな違いはありますが、いったん気にしなくてよいかと。
例えば「無線・有線」の違いなどは、骨伝導イヤホンでは「無線」が一般的なので、あえて「有線」を選ぶメリットがないと判断して、最初から候補から外します。
メーカーはこの2社から選べばOK
いま骨伝導イヤホンを選ぶなら、メーカーは「SHOKZ(ショックス)」か「boco(ボコ)」のどちらかを選べば間違いないです。
骨伝導イヤホンの市場はこの数年で一気に盛り上がってきていて、そのきっかけになったのがこの2社のメーカーが新製品を発売した2019年7月のタイミングでした。ここから2年間で市場全体の販売数は5倍以上になっています。
骨伝導イヤホンとしてのシェアは、米国メーカーのShokz(ショックス)が7割とダントツで。次に日本メーカーのboco(ボコ)が、完全にコードのないデザインがおしゃれでかわいいと話題で、日本ではこの2社が2強となっています。
※もしかすると、「AfterShokz」という名前を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、Shokzは、2021年12月29日より、ブランド名を「AfterShokz」から「Shokz」に変更しました。
SHOKZ(ショックス)
耳の後ろにコードがあるデザインで、メガネを後ろからかけるような仕組みになっています。充電はコンセントに充電ケーブルを繋ぐ仕様。
boco(ボコ)
左右がそれぞれ独立しているデザインで、イヤリングのように耳にひっかける仕組みになっています。充電は充電用の収納ケースに入れる仕様。
骨伝導イヤホン 12本のスペック比較表
発売中の骨伝導イヤホンの中から12本をピックアップして、スペックを比較してみました。リストを見るとShokzだけでも何本も種類があることが分かるかと思います。
この中から、実際に「どれを選ぶといいか」は次の項目でまとめます。(先に答えを言うと、太字の3本がおすすめしたいもの。)
※値段やレビューは日々変わるものなので、2022年7月時点の数値として参考にしてみてください。
メーカー 商品名 |
特徴 | 値段 | 重さ | 再生時間 | 充電方法 | 防水 | Amazon レビュー |
Shokz OpenMove |
エントリーモデル | 9,999円 | 29g | 6時間 | USB-C | ○ | 4.3 / 4170件 |
Shokz OpenRun Pro |
ハイエンドモデル | 23,880円 | 29g | 10時間 | マグネット式 | ○ | 4.5 / 253件 |
Shokz OpenRun |
スタンダードモデル | 17,880円 | 26g | 8時間 | マグネット式 | ○ | 4.4 / 203件 |
Shokz Aeropex |
スタンダードモデル | 19,998円 | 26g | 8時間 | マグネット式 | ○ | 4.5 / 35148件 |
Shokz OpenComm |
口元のマイク付き | 19,998円 | 33g | 8時間 | マグネット式 | ○ | 4.3 / 204件 |
Shokz OpenSwim |
MP3ストレージ付き・Bluetooth非対応 | 21,880円 | 30g | 8時間 | USB | ○ | 3 / 2件 |
BoCo PEACE TW-1 |
完全ワイヤレス | 15,950円 | 18g | 5時間 | クレードル式 | ○ | 3.7 / 379件 |
HACRAY SeaHorse | MP3ストレージ付き・Bluetooth対応 | 11,500円 | 35g | 12時間 | マグネット式 | ○ | 3.4 / 29件 |
ゴールデンダンス SOUND BONE | 有線型 | 11,630円 | 15g | なし | なし | × | 3.4 / 14件 |
Komoi | 最安値帯 | 5,999円 | 28g | 10時間 | マグネット式 | ○ | 3.9 / 110件 |
cheero Q-6 |
最安値帯 | 6,500円 | 34g | 6時間 | USB-Micro | ○ | 3.8 / 91件 |
GOOSERA H11 | 最安値帯 | 4,380円 | 23.5g | 12時間 | USB | ○ | 3.1 / 1176件 |
数値として、ここの表にあわられないのが「つけ心地」。これは下段の3本のような安価なものだとどうしても振動などに違和感があるようで、レビューでも「骨伝導ではなく、そのまま音が出ているように感じる」「音漏れが大きい」といった声もありました。
総合的考えると この3つの選び方
いま骨伝導イヤホンを選ぶなら、この3つの選択肢をおすすめします。予算や好みに合わせて選んでみてください。
①予算1万円で、バランスの良いエントリーモデル
まず試すならやっぱり、Shokzのエントリーモデル「OpenMove(オープンムーブ)」がおすすめ。コスパNo.1。
自分自身、実家の親がちょっと試してみたいという話になったときに、こちらの「OpenMove」をプレゼントしました。
60代の母は「YouTubeは情報が多すぎる」と見るのをやめてしまったそうで、ラジオをゆっくり聴いているとのこと。
ただ今までイヤホンはカナル型が耳に合わずにずっと使ってなかったそうなので、この年末に骨伝導イヤホンを買ってプレゼントしてきた。 pic.twitter.com/1VpTGXWLVw
— 堤キヨイチ🔎 Startup Project manager (@kiyoichi_t) December 31, 2021
Shokzはアメリカの会社ですが、しっかり日本語でのサポート体制が整っていて。購入時から2年間の長期保証と、購入から30日間は理由問わず返品・返金ができるという手厚さで、初心者が迷ったらShokz、だと思っています。
②少し奮発して、より使い心地の良いハイエンドモデル
「いま世の中にある骨伝導イヤホンで一番良いやつを使いたい」というなら、Shokzのハイエンドモデル「OpenRunPro(オープンランプロ)」。
エントリーモデルに比べると、全体的に少し小型になっています。ただそれにも関わらず、再生時間はエントリーモデルが6時間だったとこから、10時間へと増加。さらに、急速充電にも対応して、OpenMoveでは2時間かかっていたのが1時間でフル充電できます。
ずっと使い続けるものだからこそ、この少しの違いがけっこう嬉しいんですよね。いま自分もこの「OpenRunPro」を使っています。
細かいデザイン面では、下の画像のようにメッシュが入っていたりもするのですが、これがノイズキャンセリングマイクになっています。
「OpenMove」にもマイクは付いてるのですが、「OpenRunPro」はよりマイク性能が上がったことでクリアに通話ができるようになっています。
最後にもうひとつ、「OpenRunPro」が推しているポイントに「より深みのある低音が出る」というのがあるのですが、これは自分は正直「言われて聞いてみたら、たしかに」という感じで。
あまり最初は分かってなかったのですが、たまに「このBGM、めちゃめちゃしっかり響いてくるな」というものがあって、それは明確に「OpenMove」と違っていたので、音楽の種類によってけっこう差が出てくるポイントのようです。
③機能性よりも、おしゃれでユニークな一品
コードがまったくない、Bocoの骨伝導イヤホンの見た目に心ひかれたのであれば、それがベストチョイスです。やっぱり道具は見た目も含めて気に入ったものを使うのが楽しいですよね。
その点、Bocoは箱におさまった姿もとてもスタイリッシュ。
使う前までは、耳に1つずつひっかける形でどれだけ骨伝導で音がしっかりと聞こえるのかと不安でしたが、実際に使ってみるとShokzシリーズと同じくらい音も明瞭に聞こえます。
小さな端末ですが、左右それぞれに音量調節や再生のオンオフボタンがついているのも嬉しいポイントです。
ただ、付けながら走ってみると片耳ごとにひっかけているだけなので、落ちそうで走るペースをゆるめたり、気になります。スポーツシーンではShokzシリーズの方が良さそうです。
また、自分の場合は「付け外し」がどうしても面倒に感じてしまいました。毎回、イヤリングのように左右の耳にひっかける必要があるので、カナル式のワイヤレスイヤホンよりも付けるのに時間がかかります。
さらに、このご時世はマスクを付け外しする機会も多いのですが、輪っかになっている構造上、下の画像のような形で何度も引っかかってしまいました…
そんなわけで利便性が決め手で、自分はShokzシリーズを使うことにしました。
ここまでの話を読んで、少しでも骨伝導イヤホンへの興味が高まっていたら嬉しいです。
個人的には「骨伝導イヤホンは、生活を邪魔せずに、毎日を豊かにしてくれる素敵ガジェット」だと思ってるので、もっと普及していくだろうし、広まってほしいなと思っています。迷ってる方は、まず1台お試しあれ。
骨伝導イヤホンへのよくある疑問
※骨伝導イヤホンのメーカーや性能によって回答が多少変わってくるため、ここではおすすめしていたShokzの骨伝導イヤホンをベースに回答します。
骨伝導イヤホンって、どれくらい音漏れする?
Shokzのエントリーモデルやハイエンドモデルを普段使いしていますが、自宅や仕事場では音量60%くらいでちょうどよく聞けて、周りの人にはまったく聞こえないです。
交通量の多い道路を歩くときや電車の中などで、音を聞こうとすると音量を80%〜90%くらいにする必要があり、すぐ隣を歩く家族には、かすかに「シャカシャカ」した音が聞こえます。
こちらの記事で、実際に音漏れを収録した検証音声と一緒に、より詳しくまとめていますので、ご参照ください。
骨伝導イヤホンって、難聴の人でも聴けるってほんと?
骨伝導の技術は、もともと「補聴器」にも使われている技術で。鼓膜に原因のある難聴の方の場合は、有効だと言われています。ただ、聴覚神経に原因のある難聴の方の場合は、効果がないみたいです。
マスクやメガネの上からでも付けられる?
どちらも違和感なくつけられます。マスクもメガネも、Shokzの骨伝導イヤホンも、耳の上にかける形状をしているため、干渉する部分がありますが、大きく邪魔はしないので骨伝導イヤホンから音も通常通り聞こえます。
骨伝導イヤホンは、スポーツでも使える?(マラソンやランキング、フットサルなど)
Shokzの骨伝導イヤホンを実際につけて走ったり、運動をしたりしてみましたが、まったく問題なく使えそうです。
Shokzの場合、左右がつながった形状で頭にフィットしているのでけっこう激しい動きをしても外れません。以前は、AirPodsProを付けて運動をしていたのですが、その際にはけっこう耳から落ちそうになることがあったので、同じようなカナル型のイヤホンに比べても、段違いにスポーツに適したイヤホンだと思います。
また、防水機能があるので、汗や突然の雨で壊れてしまうことがないのも嬉しいところです。
骨伝導イヤホンは、自転車に乗りながら使ってもいい?
骨伝導イヤホンをつけながらの自転車利用は、安全な運転のために必要な音を聞き取れなくなってしまうか否か、が判断基準となるようです。
道路交通法第71条第6号と、各都道府県の規則によってそれぞれ定められていて、地域によって表現はさまざまですが、例えば東京都であれば下記のようになっています。
東京都道路交通規則 第8条 第5号
高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
※引用元:https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002199.html
カナル型のイヤホンやヘッドホンなどで完全に耳をふさいで、外部の音が聞こえなくなってしまう状態になってしまうと、完全に違反となってしまいますが、
外部音を取り込む状態のShoksのような骨伝導イヤホンであれば、基本的には問題ないと言われてはいます。ただ、骨伝導イヤホンであっても、周りの音が聞こえないほどの大音量で音を出していたり、安全な運転の妨げになっていると判断された場合には違反となるとのことなので、ここは注意が必要なところです。
カナル型のイヤホンと骨伝導イヤホン、それぞれのメリットやデメリットを知りたい。
本記事では「骨伝導イヤホンの良いとこ悪いとこ」の項目でもご紹介しましたが、カナル型イヤホンのトッププレイヤーといえば、AirPods。その最上位モデルのAirPodsPrpとShokzの骨伝導イヤホンを両方使用して、比較検証しましたのでこちらをご覧ください。
骨伝導イヤホンのデメリットと、それでも使っている理由をこちらにまとめました。この記事も参考にしてみてください。