普段読書をしていないと、語彙が身につかない、知的体力がつかないだけでなく、思わぬ落とし穴に引っかかってしまうこともあります。
それが、「ちょっとした名言にすぐ心を動かされ、そのまま座右の銘にしてしまうこと」。文脈を無視した一文に影響を受けてしまう、残念な人になってしまいがちだ、ということです。ー「語彙力こそが教養である」第2章 語彙力アップには名著が近道 よりー
大学文学部教授であり、教育やコミュニケーションの分野で多数の本を出されている、齋藤 孝さんの著書「語彙力こそが教養である」より、読書をしない弊害に関して、指摘したひとこと。
「ひとこと」に心動かされる経験をしたことのある人は多いだろう。しかし、その「ひとこと」を誰が、どのようなシチュエーションで言ったのか、文脈までしっかりと理解できているだろうか?
ちまたには、「名言」や「格言」など、引きの強い言葉を集めた本がいろいろと出回っているが、その言葉の表面だけをさらい、「これほど感動したことはない」「これから生きていく上での座右の銘にしたい」などと手ばなしで賞賛してしまっている人は少なくない。
「ひとこと書評」と題して、本のひとことを引用しながら紹介している、このサイトにとっても、耳の痛い指摘である。
しかしこれは、「ひとこと」で心動かされること自体が悪いと言っているのではない。そこで満足して、その「ひとこと」を間違った認識で「座右の銘」などと、風潮する姿は外から見ていて残念であり、なにより、もったいないと言っているのである。
「普段読書をしない人」は、その「ひとこと」が掲載されている、出展元を読んでみようという気持ちにはなりづらいかもしれない。しかし、そんな「座右の銘“候補”」に出会えたことは「チャンス」であると、著者は言う。
心動かされたということは、そのひとことを書いた人の考え方を求めているということである。もし孔子の一言で心動かされたのなら、「論語」を読む。すると「ひとこと」なんてものじゃなく、50、100とすごい言葉や考え方が見つかる。
「ひとこと」を“きっかけ”として、本を手に取ることが重要なのである。もし今回の「ひとこと」で思うところがあれば、本書を手に取ってもらえればと思う。
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