きみは「読めない派」ですか、「書けない派」ですか? 読書感想文がにがてな人には、「読めない派」と「書けない派」とがいます。ー「だれでも書ける最高の読書感想文」はじめにー
すごい読書家として知られる、文学部大学教授の齋藤 孝さんの著書「だれでも書ける最高の読書感想文」より、冒頭のひとこと。
「読書感想文が苦手」だという子にも2パターンの傾向があるのだと言います。
「読めない派」とは、読書自体が嫌いで本が選べない人のこと。
「書けない派」とは、本が好きでもそれをどうやって感想文にすればいいか分からない人のことをあらわしているのだそうです。
なんとなく、イメージがつきますよね?
本書の中では、この2パターンそれぞれの傾向の方へ向けて、文庫本1冊すべてを使い、細かくアドバイスをされています。
自分の場合、中学生のころは、ちょうど読書にハマリはじめていた時期で、読書感想文にも苦手意識などはなかったのですが、「自分が中学生のころにこの本を読めていたら、もっと楽しく面白く、感想文を書けていただろうなぁ」と思えるアドバイスが満載でした。
そんな中でも、「読めない派」の人に対して言われていた、こちらの言葉は、核心をついているものだなと感じます。
「困ったなあ、何を読んだらいいかわからない」と思っていると、楽しく本がさがせない。「しょうがない、もうこれでいいや」というのと、「これ、早く家に帰って読みたいよ」というのでは大違いだ。
まずは自分を「その気にさせる」本を選ぶことが大事。なにしろ読めないことには書けないのだからー「だれでも書ける最高の読書感想文」第5章 読書感想文を書くための、失敗しない本選びのコツー
「自分をその気にさせる1冊に出会えるかどうか」、確かにその1点だけで、読書感想文への取り組み方もまるっきり変わってきそうです。
よくよく考えてみれば、本だからこその魅力である「読みたい!」と思わせる力を活用しない手はありません。
しかし、人それぞれ、好みや興味は違いますよね。だからこそ、いくら「いい本」だといっても「課題図書」なんて指定をされてしまうと、「やらされている感」もあいまって、より一層、読書感想文を嫌いになってしまうことにもなりかねません。
そこで今回は、そんな「読めない派」の人の「読みたい!」という気持ちを出す助けになればと、
読書が大好きだという、読書家の方々に、「中学生の読書感想文におすすめの本」と題して、お話をうかがってみました。
読書家の皆さんは、国語の先生などではないので、おすすめする本も、万人にすすめられる本ではないかもしれませんが、「本がただただ大好きな人が、中学生のあなたにいいかもしれない」とおすすめしてくれる本、というのは、またちょっと違った方向から、心の琴線に触れる可能性があるのではないかと思いました。
あなたの心を「その気にさせる1冊」があれば幸いです。
この記事では「読めない派」の方を対象に深堀りした内容を書かせていただきましたが、「書けない派」の人への「読書感想文の書き方」については、齋藤 孝さんの「だれでも書ける最高の読書感想文」に網羅的にまとめられているので、ぜひこちらを手にとってもらえればと思います。
読書好きがおすすめする!中学生の読書感想文に読んでほしい本
【これからの生き方について考える本】
坊っちゃん(著:夏目 漱石)
推薦人:はやし秀美
日本の中編小説で文庫本にもなっており、文章としては長いですが、内容が中学生にも読みやすいです。
「親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている」といった、主人公の有名なフレーズは「本ではこんな風に使われていたのか」と面白く読め、内容的には、実際にこのような人生を生きる事は大変だと思えるようなものなのですが、第三者の読者として見ている分には楽しいです。
主人公である坊っちゃんは、東京から四国にある旧制中学に就職し、様々な人に出会います。
これから、高校や大学、就職へと人生を乗り越えて行かなければならない中学生の子達にも参考になるような人間関係も描かれており、腹の立つ事や辛い事がきちんと入っているのでリアリティーもあります。
お話の中で、坊っちゃんは1か月で学校を退職してしまい、東京に帰って転職し、街鉄の技手になるのですが、近頃は、実際の世の中でも転職は多くなってきており、入社してからブラック企業で何年も耐えて亡くなってしまわれた若い方も沢山いるので、こういう人生の選択方法もあるんだと指し示すような話にもなっています。
中学生くらいの思春期は複雑な心境で真面目に物事を捉えてしまいやすいので、我慢我慢で命を削ってしまう悲しい事件を防ぐためにも良い題材です。
中学生の生徒達が、どこで見切りをつけて、自分に合っている職種か我慢の限界を見極めて生きていける手助けになるような本です。
ある程度は堪えても何もかもを我慢すればいいものじゃないとわかっている方が、将来が上手くいくかと思います。中学生の時期だからこそ読んでもらいたい小説です。
陰日向に咲く(作:劇団ひとり)
推薦人:みやまま
芸人の劇団ひとりさんが描いた本として有名ですよね。映画化もされています。
この本のおすすめポイントは、どこか親近感のわく登場人物です。
どこか陽の当たらない世界で生きる人々が、一生懸命に生きる姿を描いた物語です。
この世の中に、挫折をしたことのない人はいるのでしょうか。
今、自分に自信がない。将来が不安。とくに思春期である中学生は、自分の生きる意味や理由などを模索します。
挫折を経験したりナーナーのまま大人になってしまい、自分の生きる道を見つけられないまま生きている人が、それでも光を求めて生きているのがこの本の主人公です。
どこか自分の行くあてが分からないと思っている中学生には共感ができることがあるのではないでしょうか。
この本を中学生におすすめする理由は、読んだ本人が共感を持てる本であれば、共感だけでなく自分の意見と戦わせながら本を読むことができると思うからです。
また、この本は9人出てくる主人公全てが自分の道を見つけられます。
その物語を読むことで、その時は道を見つけられなくても将来に希望が見えるのではないでしょうか。
【人間関係について考える本】
博士の愛した数式(作:小川洋子)
推薦人:りん
『博士の愛した数式』、この本はよくおすすめの本として紹介されることも多く、映画にもなっているので名前を耳にしたことがある人もいるのでしょうか。
数学の話、というので、敬遠するかもしれませんが、ちょうど中高生の頃に読むのにぴったりの本です。
この本の主人公は、家政婦として、80分しか記憶がもたない博士の家に働きにいきます。
博士は、事故がきっかけで事故以前のことしか記憶にないので、実質事故の年で記憶が途切れているのです。
そんな博士ですが、とても数学に詳しく、何気ない数字にも意味を持たせます。
家政婦には一人息子がいるのですが、その子を見て、博士はルートというあだ名を付けました。
博士、家政婦、ルートの三人が仲良く過ごしていく様子は読んでいるこっちも心温まります。
博士自身が80分しか記憶が持たないという事実に落ち込まないよう、家政婦とルート親子ができる限りの配慮をしたり、逆に博士はルートを自分の子どものように可愛がったり、思いやりや優しさがあふれる作品です。
ところどころに出てくる数学の話は、中学生なら今まで習ったことのある知識でほぼ理解できます。
そこらへんに転がっていて何気なく見ている数字の一つ一つを愛し、意味を見つける博士はとても素敵です。
80分しか記憶が持たないため、すぐ初対面になるはずなのに、数学を通して家政婦やルートと徐々に心の距離が近くなっていく様子が不思議でした。
私はこれを読んだのは大学生だったため、すでに文系に進んでいましたが、中高生のときに理系の選択肢を考えもしなかったことを少し後悔しました。
数学の話にはユーモアもありながら、ときに運命を感じました。これを読んだら、今までより少しだけ数字を愛せるようになるかもしれません。
小川洋子さんの優しく、楽しさもありながらどこか切ない文章にきっと引き寄せられます。
柔らかい文章で書かれているので、すらすら読むことができます。言葉の美しさや数字のロマンを味わえる素敵な本です。
読書感想文にぴったりなので、ぜひ読んでほしいです。
アルジャーノンに花束を(著:ダニエル・キイス)
※こちらの作品はお二人の方におすすめいただきました。
推薦人:夏みかん
有名な著書で、TVドラマでも放映されていたので読まれた方は多いかもしれませんが、最近、障がい者施設で大きな事件があり、今一度、冬休みや休暇の期間に、障がいや個性についてきちんと向き合って考える機会を持ってほしいと思いました。
私がこの本と出会ったのは、中学校の卒業式を終えた春休みでした。受験も終わり、友人に会うため片道3時間の電車の中で読み始めました。
幼児レベルの知能しか持たない青年チャーリーが、一足先に始まったネズミのアルジャーノンと同じ脳の手術により知能を発達させることになる。
チャーリーはどんどん知識を吸収し、知識だけでなく友情や愛、周りの人にとってはごくふつうの世界を初めて知っていく。
しかし、新しい世界は素晴らしいばかりではなく・・・
そして、アルジャーノンとチャーリーの運命は・・・
チャーリーの目線で描かれた本の書き方も、はじめは幼児レベルのチャーリーを表していて、より本の中に引き込まれていきました。本当の幸せって、人生って何なのか考えさせられる、心打たれる作品でした。
推薦人:ディープ
日本でも2度もテレビドラマ化し、非常に有名な作品です。
主人公はパン屋で働く32歳のチャーリィ・ゴードンという男性です。彼は6歳児程度の知能しかありません。
職場で時にひどい扱いを受けながらも、彼は周りの人たちのことが大好きでした。
そして、自分の頭が良くなれば皆ともっと仲良くなることができ、たくさんの友人を作れるだろうと日々勉強に励んでいました。
彼の熱心な姿を見た大学の研究者たちは、彼に知能を上げる手術を提案します。
チャーリィは手術を受け、天才となります。頭が良くなり希望に胸を膨らませていたチャーリィですが、今まで見えて来なかった真実に直面することになります。
この本の素晴らしい点は何と言っても主人公チャーリィ・ゴートンの純粋さです。
色で表現するとしたら白。白はイノセンスを表すイメージもありますが、白痴という言葉もあるようにどこか世間知らずという印象を持つこともあります。
しかし、すべてをひっくるめてチャーリィ・ゴートンの純白さに胸を打たれます。
何故なら彼の頭が良くなりたいというモチベーションはすべて他者との繋がりを求めているからこそだからです。
天才になり他者と衝突するようになったチャーリィは彼が求めていた姿だったのか、彼が本当に求めていたものを考えたら、ハッピーエンドだったとも肯定できるはずです。
チャーリィの純白さに触れ、自分とは、他者とは何なのか考えることができると思います。また、大切な人に会いたくなる、そんな作品です。
人間失格(著:太宰 治)
推薦人:まやや
私が人生で読んだ小説の中で1番印象深い作品でした。
読んだ後はすごく気持ちが落ちてしまう暗い感じの小説なのですが、自分が歳を重ねるごとに何度も読み返してしまう作品です。
そして、毎回感じ方が変わって行くのです。中学生の頃に読んだ時と高校生、成人になった時に読んでみると不思議な事に自分の考えが毎回ころころと変わるのです。
私はこの小説を読み太宰治さんの事をすごく調べました。この作品は作者本人の人生をフィクションを交えて書いているのではないかと思います。
「人間失格」は代表的な作品ですし、ベタだなと思われるのかもしれないですが、私が多くの小説を読んできた中で、この作品をオススメするのは、それほど惹かれるものがあり、心に残る作品だったからです。是非読んでいただきたいです。
私がこの作品を読んだ、きっかけは高校時代の現文の先生の影響でした。「日本文学は読んでおくべき」と言う先生でしたので読んでみたところ、すごくハマってしまいました。少しでも興味を持てるなら短い作品ですし、読みやすいと思います。
三匹のおっさん(作:有川 浩)
推薦人:たぶさん
簡単に言うと仲良くなかったおじいさんと孫が事件を解決していく中で少しづつ仲良くなっていくお話です。
今の時代にピッタリなホッコリするお話だったのではないかと思います。
孫に服装のコーディネートをしてもらうおじいさんなんてなかなか想像したことなかったので微笑ましく思いました。
今の時代の六十代の方の年寄り扱いしてほしくない気持ちなども分かって面白いのではないかと思います。
私は主婦なので主婦の目線で読みましたが、いろんな目線から読める物語だと思います。なので中学生が読んでも面白く楽しく読めると思います。
孫の恋愛のお話もあったりしてホントにホッコリ暖かい気持ちにさせてくれる物語です。
少し怖く感じるところもありますがそんな部分もあったり暖かい気持ちになる部分もあったり恋愛の話もあったり、私たちの日常生活にありそうなお話なのでスーッと物語に入っていける読みやすい小説だと思います。
シリーズ化されてるようなので是非読んでみてください。
【中学生の主人公の視点で描かれた本】
復讐プランナー(作:あさの あつこ)
推薦人:図書館間借り中
あさのあつこさんの小説はどれも読みやすくおすすめなのですが、中学生の読書感想文にお勧めとなると『復讐プランナー』です。
ある時突然クラスメートからいじめを受けるようになった主人公。
途方にくれていたある日、不思議な先輩が現れて主人公に「復讐計画」をもちかけます。
まず、主人公が14歳であること。
いじめを扱った作品であるということ。
登場人物が具体的にどう行動してくか、が明確であること。
そして、決して暗いラストではないということ。
同じ中学生の心情が描かれているかつテーマが身近ではっきりとしているので、感想文も書きやすいかと思います。
さて、肝心の復讐計画ですが、物騒なタイトルとは裏腹に、本文はとても堅実です。
先輩からの助言を受けた主人公は、復讐の計画を立て、それによって相手がどう変わるかまでプランニングしていく。
一見、目的は復讐なようですが、読み進めるとどうやら違うところに意図があるのでは・・・?と感じさせます。
私は成人してからこの本を読みましたが、理屈は完全にビジネスマンの企画書と一緒!と感じました。
正直もっと早くこの本を読んでいれば・・・と後悔しました。
文量もさほど多くないので、本が苦手な子でもすぐに読めます。もちろん本が好きな子はいくらでも深読みが出来る作品なので、リアルタイム中学生のうちに、読んでおくことをお勧めします。
14歳(作:千原ジュニア)
推薦人:花ワイン
私が中学生の皆さんにおすすめしたい本は、千原ジュニア「14歳」です。
今大活躍されているお笑い芸人、千原ジュニアさんの、実際の体験記です。
彼が14歳である中学生の頃、学校に通えず、不登校になっていました。
いじめがあったとか、学校に行くのがめんどうくさいとか、そういった理由ひとつではないようです。
とても複雑に混み入った、彼の中の力強いエネルギーが、「学校には行かない」という選択をしているように感じられました。
この作品を初めて読んだのが、丁度私が中学生の頃で、最初に目を通した時は、全く共感できない!と正直思いました。
ただなぜか、胸が締め付けられるような、とてもとても力強く彼は生きているんだとひしひしと感じました。
自分の将来のことや今現在の自分のことを、考えているようで全く考えていない自分自身をその時、痛感しました。
「私は彼のように必死に生きようとしているか?」、「彼のようにとことん悩みとことんぶつかりとことん自分を貫くことはできるか?」、と考えました。
14歳である、有り余るエネルギーを持て余す歳。その時ならではの情熱と力強い輝きは、ぜひ今の同世代の方に読んで頂きたいです。
共感できても、できなくても、その力強さとエネルギーに圧倒されることと思います。
今のこの若い時に、たくさんたくさん、自分のことで悩んでほしい、思う存分自分のことで一生懸命になってほしい。
少し黒く、真っ赤な表紙のエネルギーと同じくらいの中身にやられてください^^*
【時間の価値や人の老いなど、気づきのテーマが明確な本】
モモ(著:ミヒャエル・エンデ)
推薦人:lily0326
私がオススメする本はミヒャエル・エンデのモモです。小学校高学年~中学生くらいにおすすめの本です。
概要は時間泥棒に盗まれたみんなの時間を、モモという女の子が取り返すというファンタジーです。ファンタジーを中学生が読むには不向きかと思われるかもしれませんが、自分自身と重ね合わせて読むことができる実用書のようなファンタジーだと感じました。
時間を盗まれた街の人たちは、時間を節約するために遊ぶことをやめて忙しく働きます。効率重視の生活に次第に気持ちの余裕がなくなりギスギスとしてしまいます。
仕事や勉強だけを一生懸命にやっている生活が本当に幸せだろうかと、街の人たちの姿を読んで自分自身に問いかけます。一見無駄にも思えることの中に大事なことが転がっていることは多々あります。
仕事や勉強と遊びはバランスよく時間を使うべきだと気づかされます。そして、自分の今までの時間の使い方を振り返るきっかけになると思います。
どんな立場の人にも平等に与えられるのが時間。なんとなく使っている時間がもったいないと感じるはずです。
大人になってからも読みましたが、十分読み応えがあり世界観に引き込まれると続きが気になって一気に読み進められるので難しい本が苦手な方にもおすすめしたいです。
13ヵ月と13週と13日と満月の夜(著:アレックス シアラー)
推薦人:はるきち
私が中学生の時に読んだ本です。1回読んで、すぐに夢中になりました。
10年以上経っても色あせることがありません。とても素敵な1冊でした。
主人公は12歳。ところが、魔女に身体を乗っ取られ、自分は年老いた老婆になってしまう。自分の身体を取り返すために元に戻る方法を探す話です。
まだまだ若く元気で健康な身体から、いきなり腰が曲がり関節痛などに悩まされ、ピョンピョン跳ね回ることも難しい身体で、元の身体を取り戻そうと頑張る姿に思わずエールを送りたくなります。
また、身体の変化だけでなく、老婆になった時のまわりの接し方など考えさせられるものがあります。
若い時は、そういう苦労など考えることもありません。この本は、「老い」について考えさせてくれました。
しかし、『「老い」が辛いことだけをもたらすものではない』ということも教えてくれます。歳を取ることも悪くない。自分が自分でいられる素晴らしさ。そういうことを教えてくれます。
読み終えた後もハラハラドキドキ感、そしてキラキラもしています。老いること、老いた人、そして自分自身について、向き合えるキッカケを作ってくれる本です。
つるかめ助産院(著:小川 糸)
推薦人:カタツムリ生活
小川糸さんは、全体的にほっこりと緩やかな心にしてくれる本が多く、大好きな作家さんです。
その中でおすすめなのが、「つるかめ助産院」という本です。
数年前に映画化されていますが、私は本のみです。読者としておすすめしたいところは、人間という生命ある自分が、どうやって父親と母親が出会い、どんなストーリーがあり、母親のお腹にいる間にどんな気持ちで母親が過ごしているのか、が感じられる1冊です。
性教育や子育て、男女交際といった堅苦しい内容ではなく、医療ドラマのように救急や専門的な内容でもなく、命を授かる、命を育む、ということがどんなことなのかな、ということが自然と主人公「まりあ」の正直な気持ちの描写や、その他助産院スタッフとの交流を通して、感じられるのではないかと思います。
私自身、出産後にこの本に出会って読んだのですが、妊娠した時に抱いた不安な気持ちやつわり、胎動(赤ちゃんがおなかの中で動くこと)にはすごく共感しました。
どちらかというと女性目線の内容ですが、男性にも一度は手に取って読んでほしいです。
自分自身がどうやって産まれてきたのか、感動する本です。ぜひ読んでみて下さい。
【戦争や平和について考える本】
夜の神話(著:たつみや章)
推薦人:富田深雪
東日本大震災から5年以上が経過しました。少しずつですが、哀しみが癒え、当時の衝撃が忘れられつつあるように思えます。
しかし、今尚、大事な問題であるにも関わらず何の解決策も出ていない、忘れてはいけないはずの問題もあります。
その一つが、原発をどうするか。中学生のみなさんにもぜひ考えてもらいたい問題です。
原発の危険性、そしてそんな危険なものをつくったのが私たち自身であるという矛盾を、お話の中で鋭く諭してくれる一冊をご紹介します。
この「夜の神話」は、主人公の少年が「ツクヨミ様」という神様に出会い、自然や動物と話ができるようになることから始まる一夜の冒険譚です。
どんなものにも命があり、八百万の神様がいることを知った主人公は、自己中心的だった今までの行いを反省し、周りへの思いやりが芽生えてきます。
そんな時、主人公の父親が働く原子力発電所で、重大な事故が起きてしまいます。主人公はツクヨミ様にお願いしてなんとか爆発を止めたいと思うのですが・・・。
私はこの本を中学生の時に読んだのですが(今から20年ほど前のことになります)、お話は大変スリリングでファンタジックでもあり、面白く読んだものの、
「原発というものがあるんだなあ」と、幾分ピンと来ずに読み終わってしまったように思います。
しかしながら、今読み返してみると、物語の中の事故は、まさしく東日本大震災で起きた福島原発のあの事故を彷彿とさせ、児童文学であるにも関わらずあの時の恐怖が間近に呼び起こされます。
そしてこの著者が、20年以上も前から、この物語をもって私たちに鳴らしていた警鐘を、私たちは今改めて受け止め、考えていかなければならないのではないでしょうか。
楽しく読めて、深く考えさせられるこの本、おすすめです。
黒い雨(著:井伏 鱒二)
推薦人:あいざくら
私がこの本をお薦めする理由は、「本を通して忘れてはいけない日本の事実を知っておく必要があるのでは?」と思ったからです。
私も、私の親も、戦争を知らない世代です。テレビのニュースや本でしか、戦争の事は知ることはできません。
この本を読むまでは、戦争も日本の話というよりは、どこか遠い外国の話という感じでした。あまり詳しく知りたいという気持ちありませんでした。
そんな時に本屋でこの本を見つけました。戦争の話で、何となく怖そうな話、難しい話だろうなという印象でした。
今まで楽しい話、明るい話の本ばかり読んでいました。しかし、折角読むならたまには勉強になる物を読んでみようと思って、この本を購入しました。
実際に読んでみると、戦争についての知らない言葉や、原子爆弾の具体的な被害や状況が細かく書かれていました。
全く戦争を知らない私にとっては、あくまでも文章から状況を想像するだけしかできないのですが、それでも恐怖や、悲惨さがわかりました。そして自分が戦争について何も知らないのだなと感じました。
今の日本は平和だし、戦争は起こらないものだと思います。しかし、戦争や原子爆弾は現実にあった事です。だから、中学生という多感な時期に読んで欲しいなと思っています。
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